突然の訪問で「お宅の外壁、そろそろ危ないですよ」と言われて、不安になっていませんか。実際、屋根や外壁などの「点検商法」に関する相談は増えていて、国民生活センターの集計では2022年度の8,166件から2025年度は19,696件へと、3年連続で増え続けています(出典: 国民生活センター「訪問販売によるリフォーム工事・点検商法」)。
この記事は、外壁塗装の訪問販売への対応だけを、塗装歴30年の職人の立場で書いたものです。結論から先にお伝えします。
結論:玄関を開けずに「今は考えていません」で十分です
断り方はこれだけで足ります。インターホン越しに「必要ありません。お引き取りください」と伝え、玄関を開けない。理由の説明も、愛想笑いも要りません。すでに玄関先で話してしまっているなら「今は考えていません。予定もありません」と短く締めてください。大事なことはただ一つ、その場で何も決めないことです。
そのまま使える断り文句(場面別に3つ)
- インターホン越し:「必要ありません。お引き取りください」——玄関を開けないのが一番の防御です。
- 玄関先に出てしまったら:「今は考えていません。予定もありません」——理由を言うと「いつならご予定が?」「どちらに頼まれるんですか?」と切り返す糸口になるので、理由は言わないのがコツです。
- しつこい・何度も来る:「お断りしたはずです。これ以上続くようなら消費生活センターに相談します」——一度断った消費者に勧誘を続けること・改めて勧誘に来ることは、特定商取引法で禁止されています(再勧誘の禁止・法第3条の2)。困ったら消費者ホットライン188(局番なし)へ。お住まいの地域の消費生活センターにつながります。
やってはいけない3つの対応
- 「検討します」と曖昧に断る——前向きな返事として扱われ、再訪の口実になります。
- 「見積もりだけなら」と招き入れる——見積もりの時間は、そのまま営業の時間です。長く居させるほど断りにくくなります。
- 屋根や外壁の「無料点検」をさせる——これが最も危険です。
屋根の上は、お住まいの方が自分の目で確かめられない場所です。つまり、点検した人が「ここが割れていました」と写真を見せてきたら、それが本当に自宅の屋根なのか、今日できた傷なのか、確かめるすべがありません。検証できない場所を相手に委ねること自体がリスクです。冒頭の統計のとおり、点検をきっかけにした商法の相談は現に増え続けています。
訪問販売がよく使う3つの言い回しと、職人から見た「本当のところ」
30年この仕事をしていると、お客様やご近所の方から「業者さんにこう言われたんだけど、本当?」と聞かれる決まり文句がいくつかあります。代表的な3つについて、売る側でも買う側でもなく、実際に足場に登って塗る側から本当のところを書きます。
①「近所で工事をするので、足場代が浮きますよ」
どういう場面で言われるか:訪問営業の導入として最もよく聞くトークです。「今だけ」「この地区だけ」とセットで使われます。
職人から見た本当のところ:足場は、その家の形・高さ・隣地との間隔に合わせて建物ごとに組み上げるものです。隣の家の足場をそのまま持ってきて掛けられるものではなく、いったん解体して部材を運び、また一から組み直します。「近所で工事しているから、お宅の分はタダ同然」と言える場面は、現場の感覚では簡単には思い浮かびません。結論から言えば、あり得ません。私自身30年やってきて、隣どうしの現場でも足場を共用できたケースは一度もありません。
確認の返し方:「どちらのお宅の工事ですか?」「足場代が無料になることを、見積書に書いていただけますか?」——本当なら書面にできるはずです。書面を渋る時点で、答えは出ています。
②「お宅の壁、そろそろ限界ですよ」
どういう場面で言われるか:点検の申し出とセットで、不安を作るために使われる定番です。
職人から見た本当のところ:外壁の傷み方は、同じ家でも面ごとにまったく違います。日がよく当たる南面と、コケの出やすい北面では症状も進み方も別物です。だから私たちが状態を診るときは、複数の面を近くで確認し、目地や金物まわりまで見て、必要なら手で触って確かめます。道路から数分眺めただけで「限界」と言い切るのは、経験を積んだ職人ほどためらう判断です。実際、「限界と言われた」というお宅をあとから見せてもらうと、正直なところ、ほとんどは嘘と言っていい状態です。本当の「限界」は誰が見てもわかるくらい傷んでいるもので、そこまでの家はまれです。誰が見てもわかるくらいになってきたら、塗った方がいい——それが実感です。
確認の返し方:「どの面の、どの症状を見てそう判断されましたか?」「あと何年もつと思われますか。その根拠は?」——具体的に答えられないなら、その「限界」は診断ではなくセールストークです。
③「今日契約していただければ、この価格にします」
どういう場面で言われるか:話の締めくくり、いわゆるクロージングの定番です。「キャンペーン」「モニター」「地域限定」などの言葉と一緒に出てきます。
職人から見た本当のところ:塗装の見積もりは、足場・洗浄・下地処理・材料・手間を積み上げて作るものです。まじめに積み上げた金額から、その場の返事ひとつで大きく引ける余地は本来ありません。大きく引けるということは、最初の金額に引きしろが乗っていたか、引いた分だけどこかの工程を削るか、そのどちらかを疑ってよい話です。ちなみに深谷塗装では、値引きのご相談にその場で即答することはせず、「一度持ち帰って相談してから、お返事する」形にしています。その場の返事ひとつで動くような金額の作り方をしていないからです。
確認の返し方:「その価格の有効期限を書面でください」「明日になると、何の費用が上がるんですか?」
なお、その場で決めさせる売り方をめぐっては、行政処分が現に続いています。2026年にも外壁塗装工事を扱う事業者への処分が出ており(消費者庁「特定商取引法ガイド」本年度の執行状況)、2024年には訪問販売のリフォーム業者5社に最長18か月の一斉業務停止命令が出ています(消費者庁 2024年5月公表)。
| よくある営業トーク | その場で確認したい質問 | 職人から見たポイント |
|---|---|---|
| 「近所で工事するので足場代が浮きます」 | 「どちらのお宅ですか?」 「無料になる旨を見積書に書けますか?」 | 足場は建物ごとに組み直すもの。本当なら書面にできるはず |
| 「お宅の壁、そろそろ限界ですよ」 | 「どの面の、どの症状ですか?」 「あと何年もつ根拠は?」 | 面ごとに傷み方は別物。数分の外観で言い切れる話ではない |
| 「今日契約ならこの価格に」 | 「有効期限を書面でください」 「明日になると何が上がるんですか?」 | 積み上げた見積もりに、その場で大きく引ける余地は本来ない |
「本当に傷んでいるのか」は自分でも確かめられます
訪問販売に言われた内容をうのみにする前に、地上から安全に確認できる範囲で、次の3つだけ見てみてください。
※ 実際の劣化症状の写真(深谷塗装撮影・クリックで拡大)。当てはまっても「今すぐ塗らないと手遅れ」とは限りません。まずは状態の確認から。
- チョーキング:日の当たる面の外壁を指でこすってみて、チョークのような白い粉が付くかどうか。塗膜の表面が紫外線などで劣化してきたサインです。
- ひび割れ:髪の毛ほどの細いひびと、明らかに幅のあるひびでは意味が違います。幅のあるひび・年々増えていくひびは、一度プロに見せてください。
- シーリング(目地のゴム)の切れ・やせ:サイディング外壁の継ぎ目やサッシまわりのゴム状の部分に、切れ・剥がれ・細りがないか。ここは雨水の通り道になりやすい場所です。
外壁の劣化はある日突然ではなく、段階を踏んで進みます。上のサインが見つかっても「今日契約しないと手遅れ」ということはまずありません。まずは状態を確かめて、落ち着いて比較・検討してください。それぞれの症状の詳しい見方は、今後の記事で一つずつ書いていきます。
もし契約してしまったら——クーリング・オフという制度があります
「その場の勢いで契約してしまった」という場合でも、打つ手はあります。訪問販売で契約した場合、特定商取引法により、法律で決められた契約書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、書面または電磁的記録(メール等)で申込みの撤回・契約の解除(クーリング・オフ)ができます(出典: 消費者庁「特定商取引法ガイド」訪問販売)。
- 期限の起算は「契約した日」ではなく「法定書面を受け取った日」からです。手元の書類の受取日を確認してください。
- 通知は、はがき等の書面のほか、メールなどの電磁的記録でも可能です。証拠が残るよう、書面なら両面のコピーを取り特定記録郵便・書留などで送る、メール等なら画面を保存しておく方法が案内されています。
- 手続きに迷ったら、一人で判断せず消費者ホットライン188へ。最寄りの消費生活センターにつながり、具体的な進め方を相談できます。
8日を過ぎてしまっていても、あきらめる前に188に相談してください。たとえば、必要のない工事を次々と契約させる勧誘は「過量販売」として別の規制の対象になり得ます(消費者庁: 住宅リフォーム工事の過量販売規制に関する考え方(2022年))。何ができるかはケースごとに違うので、必ず窓口で確認を。
クーリング・オフの細かい条件や例外はこの記事では網羅していません。上のリンク先(消費者庁)と188での相談を「正」としてください。
訪問販売そのものが悪いのではなく、「その場で決めさせる」売り方が問題です
誤解のないように書いておきます。訪問による営業という形そのものが違法なわけではありませんし、訪問がきっかけでも誠実に仕事をする業者はいます。問題なのは、比較する時間・考える時間を与えない売り方です。
外壁塗装は、同じ家でも業者によって診立ても提案も金額も変わる工事です。だからこそ国民生活センターも、点検商法への注意喚起の中で「すぐに契約しないこと」「複数業者から見積もりを取ること」を勧めています(出典: 国民生活センター報道発表 2023年10月)。
まともな業者は、考える時間を嫌がりません。比べられて選ばれたほうが、お互いに気持ちよく工事に入れるからです。深谷塗装が相見積もりを歓迎しているのも、同じ理由です。相見積もりの具体的な取り方・見積書のどこを見るかは、別の記事「外壁塗装の相見積もりは失礼じゃない——角が立たない取り方と見積書の見方」で詳しく書いています。
急いで決めず、色や仕上がりのイメージからじっくり考えたい方は、ご自宅の写真で試せるカラーシミュレーターもどうぞ。
みよし市・豊田市周辺で、判断に迷ったら
みよし市・豊田市・東郷町・日進市・豊明市・刈谷市のあたりで、「訪問販売にこう言われたけれど本当か」「うちの外壁は実際どの程度傷んでいるのか」と迷ったら、契約の前に一度、今の状態だけ見せてください。塗装歴30年の職人が、傷んでいるところ・まだ大丈夫なところを、そのままお伝えします。
契約する前に、まず「今の状態」だけ見せてください
診断だけのご依頼で構いません。うちで工事しなくても大丈夫です。
「他社にこう言われたが妥当か」というセカンドオピニオンのご相談も歓迎します。
よくある質問
- 断ったのに、同じ業者が何度も来ます。どうすればいいですか?
- 契約しない意思を示した消費者に対して、その場で勧誘を続けることも、後日改めて勧誘に来ることも、特定商取引法で禁止されています(再勧誘の禁止・法第3条の2)。「お断りしたはずです」と伝え、それでも続く場合は消費者ホットライン188(局番なし)に相談してください。お住まいの地域の消費生活センターにつながります。
- 「無料点検だけでも」と言われました。見てもらってもいいですか?
- その場で点検させるのはおすすめしません。特に屋根は自分の目で確認できない場所なので、「割れていました」と言われても本当かどうか確かめようがないからです。状態が気になる場合は、その業者とは別に、ご自身で選んだ業者へあらためて点検を頼むほうが安全です。
- 勢いで契約してしまいました。もう手遅れですか?
- 訪問販売での契約は、法定の契約書面を受け取った日から数えて8日以内なら、書面または電磁的記録(メール等)でクーリング・オフができます(消費者庁「特定商取引法ガイド」)。8日を過ぎている場合でも対応できるケースがありますので、あきらめる前に消費者ホットライン188に相談してください。
- 訪問してくる塗装業者は、全部怪しいのでしょうか?
- いいえ。訪問がきっかけでも誠実な業者はいます。見分ける一番のポイントは「考える時間と比較を嫌がらないか」です。その場での即決を迫る、質問への回答や約束を書面にしたがらない、といった売り方をする相手とは、その場で契約しないのが安全です。